2010年9月23日木曜日

MAVIC R-SYS インプレ


このホイールが欲しいと思う人は、恐らく2つの欲求を持っているのでは無いかと思います。



1.前後で、1300g(カタログ値)を切る軽量ホイールとして
2.カーボンスポークを使った乗り心地の良いホイールとして


僕の場合、始まりは完全に、2.側の要求からでした。 完組みホイールが当たり前になり、しかも、多くのホイールがアルミ合金のスポークを採用して、パキンパキンに剛性高く仕上がっている中で、自分の様なパワーの無いライダーには、R-sysの登場はまさにOnly Oneの衝撃、しかも重量も軽いとなれば失う物は何も無い訳で、と買う前からかなり気になる存在でした。

その一方で、懇意にしている自転車屋さんや、雑誌のインプレを見る中でどうにも気になったのが、フレームの素材によって印象は全然変わるという情報でした。

曰く、剛性の高いフレームだと、ホイールの衝撃吸収性と相まって凄くフィーリングがよいが、逆に衝撃吸収性の良いカーボンホイールなんかと合わせる、単なる「もっさりとした」ホイールに成り下がってしまう、という評判です。
こういったコメントの多くは、シリアスに走っている「速い人」から発されていた情報なので、恐らく正しい情報なのでしょう。一方で、僕のように脚力が無いホビーサイクリストにとっては、どうなのかという情報が分からなかった事が、登場から2年経っても物欲爆発モードにならず、購入に至らずに済んでいた理由かもしれません(それ以前に、かなり気合いが必要な値段なので、それなりに慎重に選ばざるを得ないですが)。

そんな状態だったのですが、騙しだまし使っていた前のホイールの「歪み」が、ある日突然臨界点を超えて使えなくなったことが原因で、最後はよく考えずに「えいやっ!!」買ってしまいました。 さて、そんな感じで購入したR-sysですが、その結果として得られた効果は、期待していた「乗り心地」も「軽量さ」も、かなりの高いレベルで実現されました。


まあ、端的に言えば、「すっごく良いホイール」です。

細かく印象を挙げていくと、


乗り心地が良い
一番期待した性能である乗り心地の良さは、まあ期待通りでした。ただ、あくまでも現代のレースレベルでも通用する中での「乗り心地の良さ」ですので、比較で言えば、昔の軽量リムに細いスポーク(16番とか)で組んだホイールの方が乗り心地はよいでしょう。そんなレベルです、過度には期待しない方が良いです。


路面が荒れていても良く転がる
純粋な「乗り心地」以上に自分が感動したのは、むしろこの項目です。とにかく、路面が荒れていても、その衝撃をホイール全体で吸収して良く転がります。これが結果的にパワーロスを防いで快適に走れるため、乗り心地以上に「疲れないホイール」に仕上がっている感じます。

この特性が、まさに、カーボンスポークのトライコンプ構造が効いている部分だと思います。 通常のアルミホイールだと、路面から衝撃が入った時に、ホイールのその部分だけが歪むだけなので、結果的に「路面と喧嘩をして」速度が落ちてしまう。 それに対してR-sysだと、ホイル全体で衝撃をいなすように吸収するしながら転がり続けます。逆に分かり辛いかもしれませんが、「ホイールの真円度を崩さずに転がる感じ」と言うのが僕の印象です。


ウィップを伴う剛性感
ここが恐らく「もっさり感」の原因になってくると思うのですが、このホイール、かなり「しなり」ます。これを「剛性が無い」というか、「ウィップ感を伴う剛性感」と感じるかは、人それぞれと思いますが、僕は肯定的に捉えています。かつてのCrMoフレームの様に、適度なウィップ感を伴う乗り心地、僕はとても好きです。

この性能が遺憾なく発揮されたのが、8月末のシマノ鈴鹿のヘアピンカーブです。このコーナーはかなりの速度で進入する出来るのですが、ほどよく「しなる」事で、横方向のグリップ感を強く感じながら(サーキットの特殊舗装なのでかなりグリップする)、弱アンダーステアでコーナーを抜ける事が出来ます。もし、これが単なる横剛性の無いホイールだったら、とても怖くてこんな事は出来ません。

逆に、荷重移動したら「スパン!!」と曲がりたいという人は、R-sysでは無くて、KSYRIUMの様なパキンパキンに固いホイールをお薦めします。そして、そんな人たちにとっては、R-sysは単なる反応の鈍い「もっさりした」ホイールにしか感じないかもしれません。

という感じで、かなりお気に入りのホイールになりました。

それなりに金額がしますが、僕のようにパワーがないライダーには是非ともお勧めです。


追伸:
今年の鈴鹿ロードで、脚力のある人にホイールだけを貸して、乗ってもらいました。彼の評価は「上り坂なんかでも、踏めばホイールが回り続けてくれる。気持ちが折れそうになった時に時にも頑張れるホイール。」となかなかの高評価でした。なので、十分にホビーレーサーのレベルでも通用するみたいです。