2011年6月26日日曜日

CHERUBIM(ケルビム) ULI その1:フレームディメンション


町田の今野製作所で、オーダーしたのは今年の2月、5ヶ月たってやっと製作に入るための図面が届きました。

興味の無い方には単なる数字の羅列にしか見えない図面ですが、周囲の自転車好きの同僚達とワイワイ言いながら図面を見ました(仕事中です。まあ、これも間接的には仕事の一部です)。

そこでのみんなの印象は、

 「これ、ピストバイクじゃん!!」

です。

代表的な寸法を、候補にしていたスペシャライズド“S-Works Roubaix ”フレームの520サイズと比較してみましょう。
 
 ヘッドアングル: 73.5度 (Roubaix/72度 [+1.5度])
 シートアングル: 75.5度 (Roubaix/74度 [+1.5度])
 リアセンター: 399mm (Roubaix/412mm [-13mm])
 フロントセンター: 583.5mm (Roubaix/588mm [-4.5mm])
 トップ長: 535mm (Roubaix/537mm [-2mm])
 ヘッドチューブ長: 151mm (Roubaix/145mm [+6mm])

ご覧の通り、ヘッドアングル(キャスター角)はより垂直に近く、ホイールベースは短く、普通に考えれば、このディメンションだと、かなりクイックなハンドリングになると思われます。それこそ、行きたい方向を向いただけで、そっちに曲がって行く位の自転車が出来上がるのでは無いかって感じです。

ただ、僕のオーダーは「レースには出ない。100kmを超える長距離を快適に走りたい」という要望ですので、それを反映して、ライディングポジションは、Roubaixと比較しても「楽なポジション」になっていることが、トップ長/ヘッドチューブ長の数値から見て取れます。

もちろん、自転車のフレームのフィーリングが、ディメンションだけで決定する物ではありませんし、素材や剛性のバランスを含めて判断する物とは分かってはいますが、この“過激な”ディメンションを見て、かなり驚いた事は事実です。
周囲の意見は、「絶対にだまされている。ビルダーの価値観を押し付けられている。」と言う感じでしたが、自分としては、ここで中途半端な専門知識を振りかざすよりは、ビルダーである今野さんの“思想”に、とことん付き合ってみたいという気分になりました。

と言うことで、今野さんに対して、現在自分が感じている不安を含めてメールで返信しました。
これが、僕から送ったメールの抜粋:
  ご指摘のトップ長と、ハンドル高低差については、全然問題ないと思います。
  むしろ、キャスター角(73.5度)、シート角(75.5度)、リアセンター長(399mm)
  の設定にビックリしました(ピスト車並、ですよね)。
  自分は、決して脚力がある方では無いですし、レースでのハードな使い方を
  するわけでも無いので、フレームとしては神経質過ぎないのが良いのですが、
  そこは今野さんのお考えがあっての事だと思いますので、
  お任せしたいと思います。


そしてこれが、今野さんからの返信の抜粋:
  一見レーシーですが、きっと素晴らしい乗り心地のフレームになります!
  楽しみにしていて下さい。


これは、もう、信じるしか無いでしょう !!
恐らく、完成は残暑が終わる頃になると思われますが、楽しみに待ちたいと思います。

2011年6月25日土曜日

CHERUBIM(ケルビム) ULI

じつは、今、自転車フレームをオーダー中です。
オーダーしたのは、CHERUBIM(ケルビム)の ULIというスチールフレームです。

http://www.cherubim.jp/product/uli.html

今の“主力戦闘機”である、GiantのTCR(ONCEレプリカ)は2002年からかれこれ10年近くも乗っており、そろそろ新しい自転車が欲しいな、と思っていました。

とはいえ、コンポは7800のDuraで固めていますし、ホイールは去年にR-sysを買ったばかりです。

という事で、今回はフレームのみのバージョンアップを画策して、色々と調べたあげくに行き着いた結論が「オーダー」という選択肢です。自分も年を取ったせいか、スチールフレームのあの“細さ”に、何とも言えない美しさを感じる様になりました。

それに、かつては乗り心地の良さを前面に出していたカーボンフレームも、メインストリームになるに従い、どんどんレーシングなスペックに、つまり、カチカチの固いフレームに変貌している状況に、どうしても食指が伸びる商品を見つける事が出来なかった事も、その理由です。

実は、このフレーム、オーダーは3月に済ませていたのですが、先週にやっと図面が届いたので、まずは前振りとしてこの記事を投稿します。次の投稿では、その図面を公開したいと思います。

2011年6月24日金曜日

6DJ8 Mini Watter (ミニワッター) アンプ:その後編

6DJ8 Mini Watter (ミニワッター) アンプですが、完成して2週間ほど使っています。

聞き込んで見て分かったのですが、感覚的な表現ですが、「大人のアンプ」です。地を這うような低音や、ナイフエッジの様なシャープさはありませんが、音を正確に鳴らします。そこに、各真空管の持つ音の個性が、薄味のスパイスとして乗っている様な感じです。

音量についても、我が家の用途である「休日はFMラジオを付けっぱなし」と「Gyaoで韓流ドラマ鑑賞(奥様です)」に対しては、充分すぎる音量です。爆音に浸りたい時には、メインアンプ(と言っても10W)にご登場頂いています。

素人考えなのですが、こんな「簡素な回路」でありながら、ちゃんとした音を出すのは、信号のライン(回路)と、電源のライン(回路)を、かなり明示的に分割していることが要因だと思います。Mini Watterアンプの場合も、OPTを駆動する終段の信号ループがアースラインから独立していることが特徴ですし、差動PPにしても、定電流回路によって信号ラインが独立しています。そう言う設計をすることで、電源にまつわる課題と、信号増幅にまつわる課題をちゃんと分けて対策出来る様になり、簡素な回路でありながら、必要充分とする性能に行き着ける様になるのでは無いかと思います(実際に、ぺるけさん本人も、アースラインの設計と、信号ループの設計がキモだと強調されていますよね)。

昔、差動PPを作った時、つまり、自作初心者の頃は「信号ラインからコンデンサの排除」した部分に魅力感じていましたし、そのころの作品は、バカみたいに大きなコンデンサや、高価なコンデンサ(OSコンとか)を使って、そこから得られた音に満足していましたが、(少しづつですが)回路を勉強をする様になって、その考え方を改める様になっています。というか、コンデンサにこだわる事って、方法が違うだけで目指している所は一緒であることが分かりました。

こうやって文章を書いてきて、ぺるけ式アンプ全般に感じる事ですが、この辺のさじ加減は、家庭料理に似ていることに気がつきました。食材、設備、料理人の腕、全てが整ったレストランに対して、家庭料理で美味しい物を食べようと思ったら、

 1.レストランの食材を超える高級食材を買ってくる
 2.丁寧に下処理をし、出汁をとり、アクをとり、シンプルに味付けする

のどちらかだと思います。前者が高級コンデンサ的指向に対して、後者が今回のやり方です。そうやって、家庭でも料理をすれば、ちょっとやそっとのことではレストランに負けない食事が作れることは、たぶん、うちの奥様も同意してくれるはずです。

最後は話がそれました。

2011年6月18日土曜日

6B4G 全段差動PPアンプ 製作編#2(ラグ板パズル加工)

6B4G 全段差動PPアンプは、着々と進んでおります。今回は、シャーシのスペースに余裕が無いので、各部をラグ板にユニット化する形態を取っています。写真に写っているのは、「差動アンプ」である定電流回路です。左が増幅段2段目、右が6B4Gの最終段の回路です。初段は、FET(2SK30A)一発なので写っていません。

2段目の回路はラグ板上に、最終段はヒートシンクに乗せたトランジスタの上にLラグを組み合わせて作っています。

CRD(定電流ダイオード)や、LM317等のレギュレータICを使えばもっと簡単な回路で出来るのですが、少しでも特性を良くという願い(果たして、音の違いが聞き分けられるかは微妙ですが)と、電流値の調整が出来るように、トランジスタを使ったディスクリート回路で組みました。

差動PP回路は、定電流回路や、バイアス調整用のマイナス電源の用意が必要な分、回路規模が大きくなるので、配線は結構煩雑になってしまいますね。なので、ラグ板やユニバーサル基板を使わないと、とても僕の実装技術では収まりません。

なので、試行錯誤しながら、こうやって「ラグ板パズル」を解いている最中です。

2011年6月13日月曜日

6DJ8 Mini Watter (ミニワッター) アンプ:周波数特性取り直し編

6DJ8のMini Watterアンプですが、周波数特性を測定しました。最初に取ったデータは、ヒーター電圧が5.0Vしか無い状態での測定だったので、この結果が修正版です。

表計算ソフトが慣れないOpenOfficeを使っているので、何とも中途半端な出来ですがご容赦ください(excel買おうかな〜)。

-3dBの減衰で考えれば左右とも40Hz〜50kHzを確保しています。若干、左右のチャンネル増幅率が異なっている様ですので、これは後でFB定数を調整して合わせ込む予定です。ぺるけさんもご指摘の通り、出力は小さいですが、かなり優秀な性能を確保しています。すごいな〜(僕は回路をコピーしただけ)。

周波数特性にも、どこにもピークもディップ無く、春日無線のOUT-54B-57も非常に優秀なOPTだと思います。

と、ここまで書いたのですが、実はその後、確認までに各部の電圧を測ったら、LM317で定電圧化したヒーター電圧が、わずかに4V前後しか無いことが判明。0-8Vのタップですが、電圧降下が大きく電圧余裕が無かった様です。結局、簡易直流点火(ブリッジダイオード&コンデンサ&抵抗1発)への改修をしました。なので、やっぱり後で、周波数特性も一から取り直します。
改修完了しました。これが正式なデータです。

ちなみに、残留雑音も0.1mV以下(我が家の測定器の下限以下)と、こちらも非常に優秀な結果となっています。なお、ヒーターを直流点火した事に伴い、ヒーターバイアスはかけていません。

ちなみに、今回の測定に当たって、ファンクションジェネレータは、「お気楽オーディオキット資料室」というwebサイトにある、AD9832(デジタルシンセサイザーIC)をつかった基板の頒布を頂きました。これもこれで、自作キットでありながら、1MHzのサイン波が出力可能なかなりの優れものです。
このwebサイトは、恐らく自作DAC系の基板頒布では一番有名なサイトでは無いかと思いますので、興味のある方は是非、一度訪れてみることをお勧めします。きっと、欲しくなるようなキット(基板)がたくさんありますよ。

2011年6月11日土曜日

6B4G 全段差動PPアンプ 製作編#1(シャーシ加工)


新しいアンプの製作に着手しました。
現在のメインアンプで、300B(Fullmusicのメッシュナス管)の全段差動PPに換わる存在として、同じ3極管の6B4GのPPアンプを企画中です。

今回のテーマは、「見て美しく」、そして「安定した動作」をすることを目標に、とにかく熱設計(放熱)を考えながら作っています。
そんなわけで、この業界(真空管アンプ)ではあまり見られない、仰々しいヒートシンクがシャーシの上に屹立しています。

今回、B電源はMOS-FETの簡易安定化電源にする予定なのですが、計算したら、発熱が約5Wあります(20Vの電圧降下*250mAの電流)。この発熱を、温度上昇ΔTを15℃以下にしようとヒートシンクを探したら、この大きさになってしまいました。

それ以外の工夫としては、

 ・バイアスは、定電流回路と-電源の半固定バイアスにする
 ・ヒーターは直流点火にするけど、順方向電圧の降下量が少ないSBD(ショットバリアダイオード)を使う
 ・プレート電流は、性能が落ちない程度に、そこそこに少なく

なんて事を考えながら作っています。

で、とりあえず、シャーシ加工が終わった所です。
気持ち的にはもう少し放熱穴を開けたいのですが、天板が2mm厚のアルミということで、これ以上開けると強度に不安が出てきそうなので、これぐらいにしておきました。

ちなみに、今回のダイオードは、左の写真の秋月電気のブリッジ式のSBDのD15XBS6を使いました。

このダイオードは、(ブリッジダイオードで)ダイオードが2個挟まっているに関わらず、順方向電圧降下が0.63V(max)と少ない電圧になっています。
通常品だと、大体0.95V位ですので、約0.3Vの違いがあります。たかだか0.3Vと感じるかもしれませんが、6.3Vのヒーター電圧の約5%ですのでCRで除去できるリップルは5%改善できます。さらには、6B4G*2本で2.4Aのヒーター電流を必要としますので、0.3V*2.4A=0.72W分の発熱も除去できます。

その分、お値段もよろしく、一個200円!! しかも、4個!!
まあ、絶対額で言えば安いっちゃ安いですが、普段@10円程度の普通のダイオードを使い慣れている身にすると、一瞬固まりますね。

ちなみに、以前の300Bアンプでは、有名な“出川氏”が開発したA&R labのSBDを使いましたけどね。たしか、これは1個1500円近くした様な記憶があります。出川氏とは、とあるイベントで直接話をさせて頂いたこともありますが、エンジニアだけあって、言っていることは極めてまともです。彼の求めている物は、ダイオード整流時の高周波ノイズを極限まで減らすことにあり、その手段として彼の提唱する論理は、(詳細は僕には分かりませんが)十分に信用して良いと思います。

ただ、自分の経験から言える事は、高周波ノイズが「音」に与える影響は僕は認識出来ませんでした。まして、ヒーター電流の交流点火と、直流点火の違いも聞き分けられません。唯一言える事は、直流点火は残留ノイズを減らす方法として極めて有効なことです。

SBD(ショットキバリアダイオード)やFRD(ファーストリカバリダイオード)にまつわる「高周波ノイズ」課題は、あくまでも可聴周波数を超えた高周波用途、たとえば、スイッチング電源等の領域で初めて議論の価値が出てくる物だと思います。実際に、各メーカーの仕様書を見ても、明らかにスイッチング電源を意識した記載がほとんどですしね。

2011年6月9日木曜日

6DJ8 Mini Watter (ミニワッター) アンプ:ハラワタ編


恐らく、ミニ・ワッターアンプを独自のシャーシで作っている多くの方が興味のある「ハラワタ(実際の配線の写真)」を公開します。

右から、電源トランスを経て、真ん中の上方に、ヒーターの整流回路(LM317による直流点火回路ダウ委オードブリッジとCRの簡易直流点火に変更しました)、B電源回路(MOS-FETによる定電圧回路)が来ます。

真ん中の下方が、6DJ8を中心とした増幅回路(メイン回路)になります。その横には、ヘッドフォン端子とボリュームが見えます。

そして、一番左には、出力トランスが配置するという形で、重量的にも回路的にも、狭い空間の中にブロックごとに上手に配置が出来たのでは無いかと思います。

このアンプが、3作目になりますが、自分自身も製作の「勘所」がつかめてきた気がします。とは言っても、自分がマイスター級なんていうつもりは全然無くて、自分の実力を考えたときに、「これ位は出来る(実力がある)だろう」という予想と、「これくらいの作品にはなって欲しい」という欲求が大体一致してきたという意味です。

そんな訳で、今、アンプを作るのはたまらなく楽しい状態です。

6DJ8 Mini Watter (ミニワッター) アンプ



「情熱の真空管」で有名な、"ぺるけ”氏の回路をコピーしたミニ・ワッターアンプ(Mini Watter)を作りました。
デザインも、べるけ氏の別のアンプのものですが、ほとんど丸々コピーしました。

興味がある方はこちらのwebサイトを見てみてください。
http://www.op316.com/tubes/mw/index.htm

簡単な仕様表はこんな感じです。

出力管(真空管):6DJ8 シングル(2段増幅)
電源トランス:ソフトン社 M2-PWT
出力トランス:春日無線 OUT-54B-57
ケース: 奥沢 0-46 (サイズ:W250*D160*H50)

電源トランスは、フォノイコを作るつもりで結局お蔵入りになっていた物を使ったので、推奨回路よりも電圧が低くなっています(推奨/216Vに対して、約180V)。そのため、格段の電圧を少しづつ減らしましたが、問題なく動作しています(すいません、詳しい体力測定はまだやっていません)。

ケースのデザインも、ぺるけさんのこの作品を真似させてもらいました。サイズも、25cm*16cmの“A4サイズ”に収まっています。奥沢の弁当箱ケースはアルミの地肌なので、スプレー缶でアイボリーに塗装しています。案の定、制作中にそこかしこにキズを着けてしまったので、ちょっとアップの写真には耐えられません。

シングルアンプを聞くのは、最初に買ったKT-88のシングルアンプ以来ですが、何というかPP(プッシュプル)とは違って、おおらかな音が出てきます。なんというか、必要十分というか、別にやせ我慢では無く、肩の力が抜けたいい音が出てきました。

もう一つ、このアンプを作った理由は、ヘッドフォンアンプが欲しかったこと。

今も、ヘッドフォンで音楽を聴きながらこの記事を書いていますが、ヘッドフォンならではの高解像度に真空管アンプの“楽器性”が加わって、何とも贅沢な音が鳴っています。

2012年1月4日加筆
さて、気に入っていたこのミニワッターですが、もう少しヘッドフォンをシャープに鳴らしたくなり、差動PP型のアンプに生まれ変わる事になりました。

その顛末はこちらのリンクです。

6DJ8 Mini Watter (ミニワッター) アンプは全段差動化へ
http://dsktaka.blogspot.com/2012/01/6dj8-mini-watter.htm